相続人が認知症|成年後見人と対策

公開日:2022-10-21

さいたま市浦和・大宮を中心に相続税のご相談を承っています。埼玉あんしん相続相談室です。

認知症の人が相続人になった場合、「成年後見人」をつけることでさまざまな相続手続きを代理でおこなうことができます。

もし、将来の相続人の中に認知症の人がいるならば成年後見人とはどういった制度なのか、今できる対策はあるのかをご案内します。

有効な成年後見制度とは

認知症とは自らの判断能力がなく、相続関連の手続きは行うことができません。そこで必要となる成年後見人ですが、どのような制度なのでしょうか。

●認知症の人が不利益を被らないため

以前、認知症の人にとって不利な遺産分割協議や経済的に不利益を被ることがありました。

そこで認知症の人の判断力をほかの人と同じようにして、不利益を被らないために定められたのが成年後見人制度です。

●後見人選任には診断書が必要

成年後見人を専任するには家庭裁判所へ申立てをおこないますが、そのためには医師の認知症であることを示す診断書が必要になります。

認知症の人自身が診断を拒否して、診断書がもらえない場合は、家庭裁判所に一度相談してください。

●代理人は3種類に分かれる

認知症の重度レベルによって、選任される代理人は3種類に分かれます。

成年後見人

ひとりでは日常生活もできない状態の人に「成年後見人」が選任されます。

財産に関するすべての法律行為の代理をできるのが成年後見人で、認知症の本人には同意権や反対する権利は認められていません。

遺産分割だけではなく、財産などの管理も含めすべてが一任されています。

保佐人

日常生活にやや支障が出るレベルの認知症の人には「保佐人」という代理人がつきます。

多少の判断能力があると診断されているため、保佐人の権限も限定的です。

例えば、財産を管理する権限は認められておらず、定められた権利以外は家庭裁判所が必要と認めた場合のみ権限が与えられます。

補助人

認知症レベルが軽度だった場合は「補助人」と呼ばれる代理人がつきます。

補助人の代理権はさらに狭く、保佐人に認められている権利の中でも、裁判所が必要と認めたことのみに権限が与えられます。

 

後見人を付けるメリット・デメリットが知りたいこちらはこちらをご覧ください
「認知症の相続人|成年後見人のメリット・デメリット」

 

後見人はどのように選ばれるのか

後見人を選任する手続きの流れは下記のとおりです。

法定後見人の申立て手続きの流れ
申立て準備 診断書の取得
必要書類の収集
申立書類の作成
家庭裁判所への申立て

審理

申立書類の審査

申立人、後見人候補者、本人との面接
調査官の調査や親族への意向照会
審判 後見人を誰にするのか裁判官が判断
審判判定
後見登記 成年後見人の仕事開始

まず、家庭裁判所に申し立てをするのですが、結果が出るまで2~3ヶ月くらい期間がかかると言われていますので、時間に余裕をもって手続きをしましょう。

申し立てをした後、裁判所が後見人をつけるべきか審理をおこないます。審理に通ったら、後見人が選出され、登記をして代理人として動くことができます。

●対象は親族または専門家

成年後見人は家庭裁判所が選任します。

代理人になる人ですが、親族だけではなく、弁護士や司法書士等専門的な資格を持った人も代理人の対象となります。

ただし、認知症の方と後見人の間に利害関係がないか、財産状況、家族構成など踏まえた上で成年後見員が選出されます。

 

認知症の家族が相続人なるとき、備えること

すでに家族の中に認知症の人がいたり、将来配偶者が認知症になってしまうかもしれないと思ったりするならば、その時に備え、今できる対策をしましょう。

●遺言書を作成する

遺言書を作成することで、残された相続人となる家族が財産の分け方に困ることがなくなります。

もし、認知症の妻に財産をきちんと相続してもらい、生活に困ってほしくないと考えているならば、遺言書では認知症以外の相続人を遺言執行者に指定しましょう。

遺言執行者は遺言に従い遺産分割を指揮しますので、認知症の人も成年後見人をつけずに相続が可能となります。

また、すべての財産について漏れなく相続方法を明記しましょう。

なぜなら、遺言書に記載されていない財産が発覚した場合には、遺産分割協議が必要となり、認知症の相続人には成年後見人をつける必要があります。

●任意後見契約を結ぶ

任意後見契約とは、自身が選んだ人に成年後見人とおなじ立場となってもらう制度です。

認知症になる前から公正証書を持って契約することで、信頼できる人に財産管理や手続きを任せることができます。

また、家族信託の利用も有効です。相続人が認知症になった後も、家族信託で契約をした受託者が財産の管理や処分をすることができます。

つまり、認知症になる前に家族信託を利用すると、成年後見人をつけずに相続の手続きが可能となります。

家族信託についてはこちらの記事もご覧ください
「相続対策で注目される家族信託とは」

 

まとめ

成年後見人制度の利用が最善の対策であるかはきちんと考える必要があります。

相続が発生していて、成年後見制度を利用したほうが良いのかお悩みの方。すでに認知症の家族がいて、自分の死後どうなるか不安な方。将来、自分が認知症になるかもしれない不安を抱えている方。

一度、相続に詳しい税理士など専門家へご相談ください。

場合によってパートナーの司法書士もご紹介してくれますので、まずはご相談へ。

 

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